一覧戻るボタン

Interview/NECネッツエスアイ株式会社

遠隔支援で日本のインフラを支えるー安全品質管理の司令塔SQCC

NECネッツエスアイ株式会社

Interview/NECネッツエスアイ株式会社

遠隔支援で日本のインフラを支えるー安全品質管理の司令塔SQCC

NECネッツエスアイ株式会社

掲載:2025 / 9

インタビューリード画像

海底から宇宙まで幅広い事業領域において、一瞬たりとも止められない日本のネットワークインフラを支えるNECネッツエスアイ株式会社。2025年4月に安全品質管理の機能を集約した全社統括の拠点として「安全品質管理センター:SQCC (Safety Quality Control Center)」を設立しました。すべての現場で統一した基準の安全・品質を維持するため、SQCCが第三者の視点で現場の安全品質を保証しています。 SQCCの取り組みは、日本の産業全体が直面する高齢化に伴う人手不足や技術継承の難しさなどの課題への有効なアプローチです。SQCC設立の背景から、役割、目指す未来像、さらにその中での「遠隔支援」の活用について、NECネッツエスアイ株式会社 執行役員 森田様、SQCC統括マネージャー 重丸様、DX推進グループの大野様に伺いました。

01

安全品質管理における課題

安全・品質管理における課題とは?


執行役員 安全品質保証本部長 森田 泰輔氏
森田:昨今、日本の産業全体が直面している大きな課題として、高齢化社会に伴う熟練人材の減少と安全・品質の維持があります。我々の現場にも未経験で新たに現場に入る方が数多くいる中で、年齢や経験のばらつきが目立ち、全員が同じ品質基準で作業を行うことが容易ではなくなってきています。『現場にいる全員がプロではない』今の日本の実態は、非常に大きなリスクと感じています。

さらに、事業拡大に伴い現場数が増えると、その分だけ安全品質事故のリスクも高まります。すべての現場において高い安全・品質基準を維持するためには一元化された第三者視点による安全品質管理が必要だと考えました。

安全品質管理センター「SQCC (Safey Quality Control Center)」とは

02

大胆な構造改革で、安全品質管理をひとつに

SQCCの役割は?


安全品質保証本部 SQCC統括マネージャー 重丸氏(左) システムズエンジニアリングサービス事業企画本部 DX推進グループ 大野氏(中央)
森田:我々の会社は、金融・放送・行政・社会インフラなど、生活に欠かせないさまざまなネットワークを担っています。1分1秒も止められないネットワークだからこそ、あらゆる現場において例外なく高い安全・品質基準が求められます。すべての現場に同じ品質を届ける』その自社実践のために立ち上げたのが、この「安全品質管理センター:SQCC (Safety Quality Control Center)」です。SQCCはリモートとリアルを融合して、第三者の視点で安全品質を保証する重要な役割を担っています。
実際には、手順書や設計のレビューから、リアルタイムに遠隔での安全・品質確認などを行い、現場の品質を保っています。

SQCC設立時に苦労した点は?

森田:我々が担うネットワークは、どれもが“待ったなし”。そのため、我々としても1日も早く安全品質管理の体制を構築する必要がありました。まずは、スタッフ一人ひとりに1on1で構想を丁寧に説明するところからスタート。大企業特有の複数部門にまたがる組織を変える構造改革は容易ではありませんでしたが、スタッフ全員のおかげで今の全社統一の体制を作り上げることができたと実感しています。

SQCCで目指すことは?

森田:SQCCは「安全品質事故をゼロへ」という強い使命を掲げています。とは言っても、現場では想定外の事故が起こる可能性もあります。単に事故をゼロにすればいい、というわけでなく、万が一安全品質事故が起きたとしても、その原因を探り、二度と起こさないために何が必要か、再発防止のためにフィードバックを繰り返しながら、SQCCとしての知見を深めていくことが重要だと捉えています。

SQCCでの遠隔支援活用

03

全現場の安全・品質基準を、専門的知見でサポート

安全品質管理を実現するための体制は?

森田: SQCCでは現場の安全・品質をリアルタイムで確認・サポートできる「遠隔支援」を導入し、全国どこででも同じ品質を維持できる体制を構築しています。SQCCで活躍するスタッフの多くは、ベテランのシニアパートナーで、彼らはあらゆる分野において専門性を極めた匠のエキスパート集団です。SQCCにいるベテランスタッフの知見を活かして、遠隔から現場に的確な指示や安全確認を行っています。

重丸:ベテランスタッフが遠隔でサポートしてくれることは現場スタッフの育成面でも利点があります。かつては、先輩の動きや目線を見て真似て、そこから学んでいくスタイルでしたが、今はそもそも先輩が現場にいないケースも多々あり、学ぶ場自体が減ってきています。遠隔支援で匠の目線と現場の目線が繋がれば大いに学びになる。特にザクティのウェアラブルカメラは、頭部にカメラを装着してまさに目線をリアルタイムで配信することができる。新たな技術継承の形としても期待しています。


画像1
SQCCの大画面で現場を見ながら支援・指示する様子

画像1
SQCCへ映像を配信しながら現場作業をする様子

SQCCの遠隔支援がもたらした成果は?

画像
重丸:SQCCでは「施工」「SIサービス」「運用保守」「製品品質」「一級建築士事務所」の5つの機能を有し、様々な角度から現場をサポートしています。今までは現場のスタッフだけでは対応の判断が難しい場面もありましたが、SQCCには各分野に特化した150名強のスタッフが在籍していますので、彼らがリアルタイムでサポートすることは、現場にとっても非常に心強いんじゃないでしょうか。

また、遠隔支援の導入により、現場に行く回数も削減できています。移動時間が減った分、手順書のレビューや他現場の安全確認などに多くの時間を充てられるようになりましたし、関わる現場も確実に増えています。SQCCスタッフの知識もより一層、豊かになってきていると感じています。

04

監視ではなく「支援」という言葉で、双方の意識が変化

遠隔支援に対する現場の戸惑いは?

画像
重丸:当初は「支援」とは言わず、「監視」という形での導入でした。しかし、「監視」という名目では現場に受け入れてもらえず、どうすればいいのか思い悩んだ時期も……。ザクティの担当者にも相談しながら、今の「支援」という形にたどり着きました。「監視」という言葉に抵抗を示していた現場も、「支援」と表現を変えるだけで受け入れ体制や意識が変わってきた気がします。サポートする側であるSQCCスタッフの意識も変わりましたね。

05

一人ひとりの安全意識を強める映像のチカラ

若手育成における利点は?

画像
大野:新人研修の際に、安全確認を怠ったことによる現場作業時の事故の危険性についても取り上げています。言葉ではどうしてもイメージしにくく、自分ごととして捉えにくい側面がありますが、サーバ上に蓄積した実際の映像は、そうした研修の場で貴重な教材になってくれると期待しています。

重丸:NECネッツエスアイの技術拠点「新川崎テクニカルベース」で推進している人材育成においても、映像DXを積極的に活用していこうという動きがあります。録画映像の活用や遠隔支援など、
技術者育成においても映像DXは欠かせないものとなっていくのではないでしょうか。

06

AIでさらなる進化も。無限に広がる映像DXの可能性

将来的なAI導入で実現したいことは?

重丸:今は人が映像を見て判断していますが、将来的にはAIによる即時判断や危険予知、アラートを目指しています。日本のどの企業も「監視する人材がいない」「人手不足で安全品質が維持できない」など似たような悩みを抱えています。AIによる自動判定が実現すれば、そうした課題も解決できますし、我々の事業の幅も広がっていくはずです。
今はまだAIに学習させるデータを蓄積している段階です。夢の実現には、まだまだ時間がかかりますから、まずはしっかりと遠隔支援で映像やデータを残していきたいですね。

大野:AIは発展途上なので、間違った情報を発信してしまうという問題点もあります。AIを活用しながらも、その根幹を人がしっかりと担っていくことが、映像DXの発展にも繋がっていくのではないでしょうか。
たとえば工事の前にTBM-KY(ツール・ボックス・ミーティングと危険予知)を実施していますが、AIの危険予知に頼りすぎてしまうと作業員の危機意識が低下し、育成面では逆効果になってしまうこともあり得ます。どの段階でAIを取り入れるのか、育成レベルのバランスを見ながら慎重に判断していくことで、人も企業も共に成長していけると感じています。

 

今後のDX推進についての展望は?

画像
森田:たとえば工場では当たり前のように無人の機械が動いているなど、現場レベルでデジタル化がどんどん進められています。一方で、建設業界などデジタル化に後れを取っている業界も少なくありません。我々NECネッツエスアイは、アナログ(現場)/デジタル(ICT)の両方をワンストップで担える会社だと自負しています。だからこそ、現場の負担を減らしながら、安全に品質の高い作業ができるよう、映像DXをはじめとした様々なDXを今後も取り入れていきたいと考えています。

映像を活用した新たな事業展開は?

森田:我々は海底から宇宙まで幅広い事業を担っていますが、なかでも海底には多くの可能性があると感じています。日本近海には多くの海洋資源が眠っているものの、映像としては残せていない状況です。日本の国の未来を考える上でも、海底の映像を撮影し、デジタルでアーカイブ化するなど資源開発の一翼を担っていきたいと考えています。
こうした海洋事業をはじめ、映像のチカラで未知なる事業に挑んでいきたいですね。


画像1
NECネッツエスアイ 本社ビル

画像1
NECネッツエスアイ 新川崎テクニカルベース

NECネッツエスアイのSQCCの取り組みは、ベテランの知見と先進技術を融合させ、全国の現場に同一水準の安全・品質を届ける新たな管理モデルを築きつつあります。遠隔支援や映像DXの活用に加え、将来的なAI導入も視野に入れることで、人手不足や技術継承などの社会課題に真正面から取り組んでいます。安全を守り、品質を磨き、未来を創るSQCCは、そのすべてを一拠点から動かし続けています。


※本記事における記載内容(企業情報・所属・インタビュー等)は、取材・編集時点(2025年9月)の情報をもとに構成されています。最新の情報とは異なる場合がございます。

インタビュー一覧ページに戻る